賃貸で害虫・害獣が出たら駆除費用は誰が払う?|民法と国交省ガイドラインで読む負担の分かれ目と、管理会社への連絡のしかた | 害虫害獣駆除ナビ本記事にはプロモーションが含まれます。
賃貸で害虫・害獣が出たら駆除費用は誰が払う?|民法と国交省ガイドラインで読む負担の分かれ目と、管理会社への連絡のしかた
公開 駆除の基礎知識
この記事の作成方針
複数の駆除事業者が公表している料金表と、環境省・自治体の公開情報をもとに作成しています。掲載している費用は目安であり、実際の金額は建物の構造・地域・被害状況により変動します。
| 生ごみの放置、食べ物の出しっぱなしなど、住み方に原因がある | 借主の負担になりやすい |
| 借主が持ち込んだ(荷物・中古家具など)と考えられる | 借主の負担になりやすい |
| 契約書の特約に負担の定めがある | 特約の内容による(ただし特約がすべて有効とは限らない) |
| 原因がはっきりしない | 話し合いになる。だからこそ記録と事前の連絡が大事 |
どの場合でも共通するのは、自分で業者を手配する前に、管理会社か大家に連絡することです。順番を逆にすると、本来は貸主が負担したかもしれない費用まで、自分で払うことになりかねません。
法律の基本:民法の4つの条文
賃貸住宅の修繕と費用について、民法には次の条文があります。害虫・害獣の駆除がそのまま「修繕」に当たるかどうかは条文に書かれておらず、状況によって判断が分かれます。ただ、建物の隙間や設備の不具合が原因で、部屋を普通に使えない状態になっているなら、修繕の問題として考える出発点になります。
615条の通知は、借主の「義務」として書かれている点が大事です。見つけたのに知らせず放っておいて被害が広がると、借主側の落ち度を問われるおそれがあります。
また、被害で部屋の一部が使えなくなった場合について、民法611条は、借主の責任によらないときは使えない割合に応じて賃料が減額されると定めています。害虫・害獣の被害がこれに当たるかは個別の判断になります。
国の標準契約書も「まず通知・協議」
国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)は、借主の故意・過失による場合を除き、修繕は原則として貸主が行い費用を負担する、という扱いを確認的に定めています。そのうえで、借主が修繕の必要な箇所を見つけたら貸主に通知し、修繕の必要性などを協議するという手続きを明文化し、それでも貸主が正当な理由なく修繕しないときに初めて、借主が修繕して費用を請求できる、という流れにしています。国土交通省の研修会資料は、借主が自分の判断だけで、修繕として認められる範囲を超えて工事をすると紛争になりかねないため、と説明しています。
国交省ガイドラインの考え方
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、退去時の原状回復の費用負担をまとめた資料です。入居中の害虫駆除について直接書かれた箇所はありませんが、費用負担の考え方の参考になります。
「通常の使用」か「手入れを怠った結果」か
ガイドラインは、普通に暮らしていて生じる損耗(通常損耗)や経年変化は借主が元に戻す義務を負わず、借主の故意・過失、善管注意義務違反(借りた物を注意して管理する義務を怠ること)、通常の使用を超える使い方で生じた損耗は借主の負担、という線を引いています。たとえば、清掃や手入れを怠った結果の油汚れ・カビは、善管注意義務違反と判断されることが多いとしています。
これを害虫に当てはめると、次のように考えられます。
- 普通に暮らしていたのに、建物の隙間から入ってくる → 借主の落ち度とは言いにくい
- 生ごみを長く放置していた、異常に気づいていたのに知らせなかった → 借主の落ち度を問われうる
「消毒」は貸主負担が妥当とされている
ガイドラインの別表では、退去後の台所・トイレの消毒について、「消毒は日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当」としています。これは退去時の話で、入居中の駆除にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、専門的な消毒は借主の日常の管理の範囲を超える、という考え方は覚えておいてよいでしょう。
特約が有効になる3つの要件
契約書の特約で、本来は貸主が負担するものを借主の負担にすることがあります。ガイドラインは、借主に特別な負担を課す特約には次の要件が必要だとしています。
- 特約の必要性があり、暴利的でないなど、客観的・合理的な理由があること
- 借主が、通常の原状回復義務を超えた負担を負うことを認識していること
- 借主が、その負担を負う意思表示をしていること
つまり、「害虫駆除は借主負担」と契約書に書いてあれば必ずそのとおりになる、とは限りません。反対に、説明を受けて合意した特約なら、借主の負担になることもあります。
害虫・害獣ごとの考え方の目安
動物によって、原因が建物側にあるのか、住み方にあるのかの傾向が違います。次の表は考え方の目安で、どちらの負担になると決まるものではありません。
トコジラミは、見つけてからの行動で被害の範囲が大きく変わります。管理会社への連絡と並行して、次の記事の初動を確認してください。
契約書・特約で確かめる5つの点
連絡する前に、手元の賃貸借契約書と重要事項説明書を見ておくと、話が早くなります。
国の標準契約書の考え方では、借主が自分の費用でしてよい小修繕は、安くでき、建物を傷めるおそれのないものです。建物の隙間を塞ぐ、床下に薬剤を入れるといった作業は、これには当たりにくいでしょう。
管理会社への連絡のしかた
伝えること
連絡するときは、次の5つを伝えると、相手が状況をつかみやすくなります。
最後の「自分でしたこと」は隠さずに伝えてください。業者が調べるときの判断材料になります。
記録の残し方
費用負担の話し合いでは、「いつ知らせたか」「何を見たか」が後から問題になります。次のように記録を残しておきます。
- 写真・動画:虫や糞、侵入口らしい隙間、被害の場所。日付が分かるように撮る
- 連絡の記録:電話なら日時・担当者名・言われた内容をメモする。できればメールや管理会社のアプリなど、文字で残る方法でも送る
- 被害のメモ:見つけた日、場所、数を簡単に書いておく
- 入居時の記録:入居時に撮った部屋の写真があれば、もとからあった隙間や汚れの証拠になる
埼玉県消費生活支援センターも、入居中に不具合が生じた場合はすぐに貸主側に相談するよう、また入居前に物件の状況を写真などで記録しておくよう呼びかけています。
連絡文の例
○○号室の△△です。10月5日ごろから、台所のシンク下と冷蔵庫の裏でゴキブリを毎晩3〜4匹見かけます。シンク下の配管の周りに隙間があり、そこから出入りしているように見えます(写真を添付します)。市販の殺虫スプレーを使いましたが減りません。調査と対応をお願いできますでしょうか。費用の扱いについても教えてください。
「費用の扱いについても教えてください」と最初に聞いておくと、後から負担の話でこじれにくくなります。
自分で業者を呼ぶ前にやってはいけないこと
一方で、市販の殺虫剤や粘着シートを使う、生ごみを片付ける、食べ物を密閉するといった、建物に手を入れない対処は自分で進めてかまいません。むしろ、こうした日常の手入れをしておくことが、借主の側の落ち度を問われないためにも役立ちます。
管理会社が動いてくれないとき
連絡しても、「入居者の負担です」と言われる、なかなか対応してくれない、ということもあります。
- 理由を聞く:なぜ入居者負担なのか、契約書のどの条文・特約によるのかを、文字で回答してもらう
- 原因の調査を頼む:原因が分からないまま負担を決めるのではなく、まず業者に原因を調べてもらうよう求める
- 期限を区切って催促する:「◯日までに対応の予定を教えてください」と、記録に残る形で送る
- 相談窓口を使う:消費者ホットライン「188」で、近くの消費生活センターにつながる
民法607条の2では、通知したのに貸主が相当の期間内に修繕しないとき、または急迫の事情があるときは、借主が修繕できるとされています。ただし、何が「相当の期間」か、「急迫の事情」に当たるかは状況しだいで、自分で施工した費用をどこまで請求できるかも争いになりえます。自分で業者を呼ぶ判断をする前に、消費生活センターなどに相談しておくほうが安全です。
ハクビシンやネズミについては、市役所や保健所が相談に乗ってくれることもあります。動物ごとの対応の違いは、害獣駆除は市役所に頼める?で整理しています。賃貸の場合も、市役所より先に管理会社へ連絡するのが基本です。
「害虫駆除費」を請求された・配られたとき
賃貸では、入居のときや入居中に「害虫駆除」の名目で費用を払ったり、薬剤を配られたりすることがあります。「賃貸の害虫駆除は意味ないのでは」と感じたときに確かめる点を整理します。
入居時の「室内消毒」「害虫駆除」費用
契約時の精算書に、「室内消毒」「抗菌施工」「害虫駆除」などの名目で費用が入っていることがあります。埼玉県消費生活支援センターには、契約時の概算書になかった消毒費用が、あとから請求書に追加されていたという相談が寄せられています。
入居時の施工は、その時点で部屋にいる虫への対策です。外から入ってくるネズミや、持ち込まれるトコジラミまで防げるとは限りません。効果がないと決めつける必要はありませんが、「払ったから入居中は大丈夫」とも考えないほうがよいでしょう。保証が付いているなら、入居後に出たときに使えるので、書面を保管しておいてください。
入居中に配られる薬剤や、一斉駆除の費用
建物全体で定期的に駆除をする、各部屋に薬剤を配る、という管理会社もあります。
- 共益費の範囲かを確かめる:国の標準契約書の解説では、共益費は階段・廊下などの共用部分の維持管理に必要な実費(光熱費、上下水道使用料、清掃費など)に相当する費用とされています。共用部の定期的な駆除が共益費でまかなわれている物件もあるので、別に請求されたら、何の費用かを確かめてください
- 配られた薬剤は使う:一斉に処理すると、建物全体で効果が出やすくなります。使わないと、自分の部屋が逃げ場になることもあります
- 室内への立ち入りを伴う作業:貸主が建物の保存のために必要な行為をするとき、借主は拒めないとされています(民法606条2項)。日程が合わないときは、断るのではなく日程の調整を頼みます
自分で払うことになったとき
話し合いの結果、自分で業者に頼むことになった場合や、原因が自分の住み方にあった場合は、見積もりの中身を比べて依頼先を選びます。その場合も、建物に手を入れる作業(隙間の封鎖、穴あけ、床下の処理など)は、施工の前に管理会社の了解を取ってください。
害虫駆除の料金が何で決まるか、見積書のどこを見れば比べられるかは、次の記事で説明しています。
よくある質問
Q.賃貸でゴキブリが1匹出ただけでも、管理会社に連絡すべきですか。
1匹見かけただけなら、市販の殺虫剤や毒餌で様子を見てもかまいません。繰り返し何匹も出る、入居直後から大量に出る、配管まわりの隙間など建物側に原因がありそうな場合は、早めに管理会社へ知らせてください。民法615条は、修繕が必要なときに借主が遅滞なく貸主へ知らせることを定めています。
Q.契約書に「害虫駆除は借主負担」とあったら、必ず払わなければいけませんか。
必ずとは限りません。国土交通省のガイドラインは、借主に特別な負担を課す特約が有効になるには、合理的な理由があること、借主がその負担を認識し、負う意思表示をしていることが必要だとしています。ただし、説明を受けて合意した特約なら負担になることもあります。納得できないときは、消費者ホットライン「188」で相談できます。
Q.管理会社に連絡せずに業者を呼んでしまいました。費用は請求できますか。
状況によります。民法608条は、貸主が負担すべき必要費を借主が払ったときは貸主に請求できるとしていますが、そもそも貸主の負担だったのか、連絡せずに施工してよい事情(607条の2の急迫の事情など)があったのかが問われます。施工の記録や見積書、写真を揃えて、まず管理会社に事情を説明してください。
Q.入居時に払った害虫駆除費は意味がないのですか。
意味がないとは言い切れませんが、入居時の施工はその時点の対策で、外から入ってくる虫や害獣を入居中ずっと防げるとは限りません。施工の内容と保証の有無を確かめ、保証があれば入居後に出たときに使えるよう、書面を保管しておいてください。任意のオプションなら、契約前に外せるかを聞くこともできます。
Q.天井裏にハクビシンがいるようです。自分で追い出してもいいですか。
賃貸では、まず管理会社か大家に連絡してください。ハクビシンは鳥獣保護管理法の対象で、無許可で捕まえられません。追い出した後に侵入口を塞ぐ作業も建物に手を入れることになるため、貸主の判断が必要です。
まとめ
まとめ
賃貸住宅で害虫・害獣が出たときの駆除費用は、発生の原因と契約の内容で変わります。一律に「大家が払う」「入居者が払う」と決まっているわけではありません。
- 見つけたら、自分で業者を呼ぶ前に管理会社か大家に連絡する(民法615条の通知義務)
- 建物側の原因なら貸主の修繕の問題になりうる(民法606条)。住み方が原因なら借主の負担になりうる
- 契約書の修繕の条文と特約を確かめる。特約があっても、要件を満たさなければ争える場合がある
- 写真・連絡の日時・担当者名・被害のメモを残す
- 隙間を塞ぐ、穴をあける、ハクビシンを捕まえるなど、建物に手を入れることや無許可の捕獲はしない
- 話がまとまらないときは、消費者ホットライン「188」で相談する
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